前編の続きです。
日本のガス・油田の歴史と現在
阿賀沖油ガス田
嘗て、1970年代前半の日本中を歓喜の渦に湧かせた「新潟で石油が出たぞ!」の結果は次の通りだった。
●阿賀沖油ガス田(新潟市新潟東港から約15キロ沖合)1972年にボーリング調査。海底2千メール付近に油田、ガス田確認。1974年にプラットフォーム設置後、1976年から生産開始して1998年に枯渇確認。約20年間で、原油1433千キロリットル(約900万バレル)/天然ガス4072百万立方m。陸地に近い場所にあり、産出開始時期には期待の大きさにより結構ニュースになっていた。
因みに、現在シェールオイルで賑わっている米国が、世界一の原油生産国であるが(2位のサウジアラビアよりも、 (1日当たり) 約百万バレル多い)、2017年度のデータですが、米国の1日産出量は約1305万バレル。阿賀沖の20年分はその程度の量・・・ちょっと哀しい現実。天然ガスは計算が面倒だし資料探しも時間掛かるし、原油と大して変わらない結果でしょうから比較除外します。「期待外れ」なんていう言葉は、当時の科学者や産業界の人達に対して失礼極まりない。だからその言葉は使いたくないけど・・・結果的に、原油や天然ガスの国内産出への期待感は急速に萎んだ。
現在稼働中の新潟県のガス・油田
けれども、新潟県には稼働中のガス・油田が3箇所もある。他には、秋田県と北海道に油田が1箇所ずつ。千葉県にガス田が2箇所ある。
●南長岡ガス・油田(長岡市南西部の丘陵地帯) 1976年にガスの存在確認。1979年に、地下約4千~5千mの大深度付近にガス田発見。その後、以下のプラント建設。
・越路原プラント(1984年稼働~日産420万 Nm3 )
・親沢プラント(1994年稼働~日産166万 Nm3 )
年間生産量的には、原油が約180千キロリットル。天然ガスが約1340百万立法mという事と、海底ではなく陸地だということで阿賀沖に比べたら優秀なガス油田と言える?でも、相当深いので、当然開発費用もそれなりに掛かっている。保有企業は、国際石油開発帝石(帝国石油と国際石油開発が経営統合した会社)。
●片貝ガス田(小地谷市片貝地区一帯) 1960年に石油資源開発がガス田を発見。1961年に地下千~2千m付近で生産開始。1977年には地下4~5千mの大深度に油田・天然ガス層を確認。1984年に、大深度でのガス生産を開始。
現在の年間産出量は、原油約35千キロリットル。天然ガス421百万立法m。保有企業は、石油資源開発。埋蔵量に於いては、南長岡を凌ぐと言われていて大きな期待が寄せられている。反面、2004年(平成16年)10月23日の中越地震(M6.8。震度7の大地震。震源地は長岡市川口町)は、上述の南長岡ガス油田と片貝ガス田の稼働が原因と見る人達(そのように考えたい人達)がいるのも事実。私などは地質学者でも何でもないので何とも言えない。
●岩船沖油ガス田(胎内市の沖合約4キロ) 1983年ボーリング調査。海底約2千~2500m付近に油田・ガス田発見。1990年生産開始。2006年、新たな貯油層が発見されるも、現在の年間産出量は、原油約90千キロリットル。天然ガス178百万立法m。保有企業は、石油資源開発、日本海洋石油資源開発、三菱ガス化学、新潟県の外郭企業。2001年に、当初は出資者だった出光が先行き不透明感により撤退。でも、2006年の出来事を思えば今後の期待は微かにある?
新潟県以外の稼働中ガス・油田
●秋田県には、「日本でもシェールオイル発見!」と世間を賑わせた秋田県由利本荘市由利原の油田では、年産68千キロリットルの原油生産を行っている。これについては、東洋経済オンラインのネット記事が凄く分かり易く書いてくれているので参照URLを(勝手に)紹介しておきます。「日本初のシェールオイル採取–現地ルポ」。
●北海道には、苫小牧市に勇払ガス田がある。道内に於いては結構な量が供給されているみたいですけど、経営は苦しいということで、「結構な量」はやっぱり少量に過ぎないのでしょうし、枯渇の噂も絶えない。
●千葉県には、ガス田が二箇所あり、併せて、年間約300百万立法mの天然ガスを産出。チバニアンの千葉には、何か大きな資源がありそうな気がするけれど・・・
日本人の多くが感じていること?
以上が、現在稼働中の国内ガス油田ですが、それ以外にも、手出ししていない(手出し出来ないでいる)”国内”ガス油田が、北方領土や東シナ海にある。それらについて、日本は手出し出来ないでいるが、支那とロシアは大いに活用している。口惜しいばかり也。
そもそも!!!戦前の調査技術や採掘技術が今くらいにあったなら、「資源が無い!」なんて焦る必要は全く無かった。太平洋~オホーツク海を広範に領していた日本は、今どき、世界最大級のエネルギー資源・工業資源の産出国であった筈。尤も、それを知っていた世界は、日本からそれを取り上げる機会をずっと待っていたのかもしれないけれど・・・。今更、そんな事を嘆いたところで何も変わらないが、政治家や官僚の仕事は国民生活に直結していることを十分理解しなければならない。とんでもない目に遭う。そして、政治や国民を煽るマスコミの質こそが問題。明治から昭和にかけての日本を対外戦争に突っ走らせたのは、マスコミが、無責任に煽った所為でもある。
マスコミが煽ったと言えば、オーランチオキトリウムはどうなった?石油(の代替燃料)を生産する藻類として大注目され、2010年頃には連日報道されていた筈だが。というわけで調べてみたら、去年(2018年)の夏に、遂に、雑菌処理や培養コスト削減の目標達成は不可能と判断されて、共同研究開発者だった仙台市と筑波大学は「断念」という結果を下したしたらしい。が、研究施設だけは残して、新たな研究を模索しているらしいけどちょっと残念だ。けれど、日本には特にこういう事が起こるので、期待を裏切られるのは珍しくも無いし、マスコミがニュースソースにならないと判断した時点で、国民の熱は既に冷めていた。熱し易く冷め易い日本人には、結果が出ることに長い年数が必要な研究開発への期待持続を求めることは極めて難しい。
世界から注目されているメタンハイドレート
メタンハイドレートと地球温暖化問題
メタンハイドレートは再生可能エネルギーではなく、石炭、 天然ガス 、原油・シェールガス・シェールオイルなどと同様に化石燃料の一種とされる。「低温かつ高圧の条件下でメタン分子が水分子に囲まれた、網状の結晶構造をもつ包接水和物の固体」という事であり、その殆どは海底深くから噴出している。
メタン自体は、強力な温室効果ガス(同量の二酸化炭素に比べて21~72倍の温室効果を齎す)である為、地球温暖化に対して悪影響を及ぼす危険な存在とされる。
人類社会を大きく発展させた産業革命は、同時に、人工的温暖化ガスを大量に排出する引き金となった。元々、有り得なかったガスなので”人工的”なガスの大量発生で、地球は耐えられなくなっている。しかし、産業の歩みを止めるわけにも行かない。それで、”出来るだけ”ガス排出量を抑制しましょう、という「気候変動に関する国際連合枠組条約」が第三回気候変動枠組条約締約国会議(COP3=京都会議/1997年12月)で発効され、それがいわゆる『京都議定書』。そして最近の話題としては、第21回パリ会議(COP21/2016年11月)で発効された『パリ議定書』の協定から、トランプ米国大統領は「アメリカ合衆国は離脱する」と宣言。2020年11月4日(合衆国大統領選挙11月3日の翌日)が離脱日となる。つまり、トランプ大統領が再任されたら米国はパリ協定からの離脱を粛々と実行するのみということ。トランプ大統領に言わせれば「米国以外の国は目標値も不当に低く、しかも、実行する気もない。世界各国に比べて米国だけが異常に過酷な要求を受けていて、割に合わない!」ということだが、この離脱宣言に対して、米国や世界の経済産業界は大いに賛同。米国の株価は高騰し続けている。
米国の株価に引っ張られるように日本の株価も再び上がっているけれど、トランプ大統領からは、常日頃、「日本はやれることを何もやろうとしない」と皮肉を言われ続けている。まァ、トランプ大統領の日本に対する指摘は当たっているが、日本を何もやろうとしない国にしてしまったのはアメリカ合衆国からの圧力とも言える。
次の事もまた、米国からの強い要求なのかどうかは分からないけれど、「メタン及びメタンハイドレートの産出処理技術を早急に確立して、燃焼させるべきだ」という声が大になってきたのは2010年前後。これはトランプ大統領誕生以前なのだが、どういう事かと言うと・・・
メタンはそもそも火山ガスである。そして、世界最大の火山帯である日本列島及び近海から、常に大量に放出され続けている事実がある。更に、気温上昇に伴い、(特に)日本海域海底に大量に潜むメタンハイドレートが放出されることが懸念されている。
それは、日本列島のどうしようもない特色であり、人工的ではない自然の産物である。だから、メタンやメタンハイドレートをどうするか等は日本に責任があるわけではなく、寧ろ、人工的な排出ガスを世界各国が抑制することとは切り離すべき問題。根本が違う。しかし、実は、メタンやメタンハイドレートの大量産出国である”隠れた資源国”の日本を羨ましいのか苛めたいのか、「何とかしろ!」と圧力を受けていることは間違いない。が、簡単な話では無い。上述した南長岡や小千谷のガス層に手を出したことが大地震を招いたという疑いもある。自然の調和(バランス)に対して人工的に手を加えて産出(開発)することの良し悪しは簡単に答えを出せない。
メタンハイドレート採取史
日本列島をすっぽりと包み込む環太平洋火山地帯に最も多く分布すると云われるメタンハイドレートですが、その存在が最初に明らかになったのは、1930年代。極寒の永久凍土地帯(=シベリアやアラスカ、カナダ北西部)の天然ガスパイプラインでは、パイプライン内にハイドレート現象(結晶構造体/結晶体)=ガスハイドレート(ガスの丸い固体=ガス結晶体)が起こることが指摘されていた。それが、採取後に固体化(結晶化)したものではなく、最初から固体化(結晶化)した”天然ガスハイドレート”であると認められたのは、1967年に、ヤクーチャの永久凍土地帯から、世界初の天然ガスハイドレート岩石資料が採取された事に依る。それと前後するように、永久凍土地帯各所から、天然ガスハイドレートの堆積層が発見されるようになる。実は、この事はけっして喜ばしい事ではなく、地球温暖化に対して真剣に研究に取り組んでいる科学者や関係者達は、極めて危険な事だと指摘している。
温暖化によって永久凍土が氷解を始めると、当然ながら、閉じ込められていたガスハイドレートが大量に大気中に放出される事になる。このガスハイドレート中に、メタンハイドレートも含まれている事は確実な事とされ、永久凍土の氷解は、即ち、大量のメタンガスが大気中に放出される可能性を意味するものであり、その際には、地球の温度がどれだけ上昇するか想像もつかないとされる。
永久凍土内のメタン(ガス)ハイドレート放出の可能性を恐れている人達は、だからこそ、地球上で最も大量にメタンハイドレートを”保有”している日本に対して、さっさと利用方法なり焼却方法なりを編み出せ(開発しろ)という要求をしているわけ。でも、元来、そういう事への危機意識が極めて薄い日本国家や日本国民は、「時間の掛かる、金の掛かる、面倒臭い・・・」事に協力する姿勢はほぼ無い。しかし、これが儲け話が絡んで来ると食いついて来る。全く、現金な国家国民である。
シベリア(ロシア)とかアラスカ(米国)とかカナダ(1974年に、カナダ北西部のマッケンジー・デルタで、天然のメタンハイドレートが浅い砂質層に埋蔵されている事が発見された)の話であって、自分達には、「そんなの関係ねェ」という日本の姿勢は、1980年を境に”徐々に”変わって行った。
1980年。南海トラフ周辺でメタンハイドレートが発見された。以前から、海底火山帯含む深海海溝には大量のメタンガスの存在が指摘されていたが、1万メートル超の深い位置でガスを採取する事など、出来たにせよ恒常的に産出してエネルギー化する事など不可能(コストが見合わない)と考えられていた。が、これがハイドレート(結晶固体)構造のメタンガスならば採取出来る(利用出来る)のではないか?と考える人達が現れ始めた。「金になるんじゃないか?」という話になら乗って来る人は出て来る。そして1989年(奥尻海嶺)と1990年(四国沖)で、サンプル回収。可能性があると判断され、2000年に、南海トラフでメタンハイドレートの存在が位置的確認に至る。色めき立った経産省は、開発検討委員会を設置する。
「日本の技術ならハイドレートからガスを抽出する事が出来る」と世界初を目指していたかもしれないが、それはあっさり翌2001年にカナダがやってのけた。しかし、兎も角、メタンハイドレートからガスが採取出来ることが立証されたことで、これには日本の採掘企業や商社、エネルギー関連企業、そして学術研究団体(大学その他)が前のめりになって行く。先ずは、採掘技術の確立を。という事で、上述したカナダ・マッケンジーデルタに於いて、メタンハイドレートの回収実験が始まり、これには、日本、カナダ、米国、ドイツ、インドが参加して共同研究に着手。これも2002年に成功して、遂に、メタンハイドレートは、将来のエネルギー燃料の有力資源として躍り出た。
2004年夏に上越沖でのメタンハイドレートのサンプル採取に成功した事で、太平洋側のみならず日本海側にも分布していることが確実となる。そして、日本領海のほぼ全域にメタンハイドレートが大量に存在している事が世界的に認められることになった。後は、採取(回収)方法さえ確立出来れば、日本は、ガスに関しては世界的な資源国となれることが確実視されている。
永久凍土が温暖化で氷解すればそれこそ宝の持ち腐れとなるロシアや米国、カナダと、日本は、この分野では共同研究者として手を取り合っているように見える。実際、バイカル湖湖底からのメタンハイドレート採取による技術実験は、ロシア科学アカデミーと清水建設、北大、北見工大が共同参画して成している(2008年夏)。
2013年に、日本は、世界で初めて、海底からメタンガスを採取することに成功。それ以降も、様々な方法で採取~抽出実験が繰り返されているが、「持っていないフリ」を続けなければならない日本が、その姿勢を一変させて、メタン大国(安全採取~活用が大前提)となる時が来るのだろうか?何となく下火になっている気がしないでもない。時折、(メタンハイドレートに関して)物凄い事が起きたようなニュース報道は行われるけど、実は、大した事ではなかったり・・・
再生可能エネルギー発電
●地熱、温泉熱
地熱・温泉熱を利用して蒸気を発生させ発電する。この実験(挑戦)は続いているが、コストが見合わないとか、賛意を得ないとか、色々と苦戦中らしい。
●光・電磁波
太陽光発電、太陽熱発電は軌道に乗っているが、全てそれで賄うことはまだ困難。でも、最も可能性の高い分野である事は間違いない。
●気流
風力発電も実用されているが、風の安定性や、騒音問題(があるので、海上運用へ向かっている)などにより、多くを望める状態ではない。
●潮流/水流
※大規模水力発電(いわゆるダム発電)は再生可能エネルギー発電分野の90%を担っていて、今後も河川が枯渇しない限り続いて行く技術。
※小規模流水を利用するマイクロ発電(上下水道や用水路を利用する発電)も、環境破壊が小さい事で今後も続いていく技術。寧ろ、設置場所の多さ、易しさにより、発電技術さえ向上すると凄い可能性を秘めている気がする。
※波力発電は、今、ヨーロッパを中心に(特に英国)、再生可能エネルギーとして大きな注目を浴びている。海に囲まれている日本も、これは無視出来ない技術分野であり、潮力発電技術と噛み合わせれば、枯渇しない最上の資源に成り得るかな?
●バイオマス
薪、炭、バイオコークス(植物性バイオマスを高密度に固形化した材料)、家畜その他の糞、バイオガス(糞尿から発生させるメタンを燃やして得る)、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオ重油、木炭、その他諸々
※バイオマスは、発電利用と言うよりも動力としての利用が有望視される(実際にそのように用いられている)。
●核リサイクル・・・色々書きたい分野だけど、今回は割愛
産出や、発電エネルギーに限らない話
●(世界最大級の)都市鉱山
日本の産業資源の中でも、”世界に冠たる”と表現出来るのが都市鉱山。でも、それを知った支那系の業者がゴミ採集に託けて、どんどん奪っていると云われる。
●(世界最大の)石油備蓄量
日本の政治は二流だ、三流だ・・・と言われて久しいが、これは多分、戦後日本の政策の中でも最上位の成功だと思うのが、石油備蓄政策。原油埋蔵量は、使用量(輸入量)に対して0.01%程度しか無いのだが(桁間違っているかもしれないけど)、石油備蓄量だけは日本がダントツ世界一。国家の安全を確保するには、最低90日程度の石油を備蓄しておくことが必要とされる現代社会に於いて、米国は、常に140日分をキープしていると云われる。が、日本の備蓄量は200日分以上である(事実)。福岡(北九州市)にも、白島国家石油備蓄基地というバカでかい備蓄施設があるけれど、それを含めて全国に10箇所の備蓄基地がある。何かあっても、半年以内に解決出来るなら経済活動が止まることはない。というのは凄い事。産油国でさえ不可能な話。
持ってないのは・・・フリ?
日本は資源を持たない国。という表現が百%正しいものではないことは書いて来た通り。しかし、宝の持ち腐れ状態にしてしまっているものも少なくない。
前編に書いたように、人材資源という宝の持ち腐れ。1億2千万人以上もいる国民の力をフル活用出来ていないように思える。一人一人を大切にして、無理なく、そして無駄なく、皆が活き活きして躍動感溢れる社会となれば、少しのエネルギー資源しか無くても、千倍、万倍に出来る。「日本は、国民という掛け替えのない資源を持っている」と、皆がそのように言える時が来たら、「資源を持たない国」なんていう言葉も死語となる筈。終わり。
コメント